早香へ
日本の小学校を卒業後、6年間留学したフィリピン・バギオ市では色んなことがありましたね。
最初は英語が話せないから一般のクラスに入れず、職員室で個人授業を受けていたけどとてもつらそうで、時々泣いていたのを覚えています。
友達がいなかったから学校から帰宅すると毎日自分の部屋にこもり、日本のアニメを見まくって現実逃避みたいなことをしてた時は正直凄く心配でした。
でもその後の潮目が変わった出来事は今でも忘れません。何を思ったのか突然コスプレをしてバスに乗って街に出て行った時は本当に驚きました。
やがてコスプレイヤーの友達がたくさんできましたね。
コンテストの前になると勉強そっちのけで毎日夜中まで衣装や道具を作ってた時は親としてこれでいいのだろうかと心配したけど、真剣な顔で没頭しているあなたの顔を見て何も言えませんでした。
フィリピンの学校には部活動もありませんから、大勢コスプレイヤーが集まって行われた北ルソンブロック大会で優勝し、皆でマニラの決勝大会の応援に行けたのもあなたのおかげで楽しい思い出になりましたよ。
時が経ち、夏休みの一時帰国で初めてアルバイトを経験。そこへ来たお客さんから10期生のオーディションを勧められたのが人生の転機でしたね。
オーディションが進む度にバギオから6時間かけてマニラに行き、飛行機で名古屋に向かう姿に必然のようなものを感じました。
運良く合格させてもらえて本当に良かったね。
SKE48に加入して初めの1年間はコンサートや劇場公演、それと何回か雑誌に載せてもらえたりと順調に見えました。
でも2年目は人生最大の挫折を経験しましたね。
リハーサルで起きた足の怪我によるトラウマ、仲の良かった同期メンバーの卒業も重なったからか体調不良で半年間の休業をしました。
当時の研究生は覚えることが多く、伸び盛りであったため、あなたは皆に置いていかれてしまうのが怖かったのでしょう。病気になってしまったこと、休んでしまったことを悔やみ、唇を噛みしめながら泣いていました。
でもあの時、パパとママはあなたを慰めることくらいしかできなかった。ごめんね。
でもね、少し長く生きているとパパにも似たような経験があったけどきっと大丈夫。長い人生いくらでも失ったものを取り返せるし、もし将来同じ経験をする仲間がいた時にはアドバイスすることもできると思う。
パパとママはあなたを20年間見てきたから、その底力があることをよく知っています。
だから決して焦らず、周囲の人達に対していつも感謝の気持ちと謙虚さを忘れずに、ゆっくりでいいから前向きに進んで欲しいです。
最後になってしまいましたが、いつもお世話になっている10期や先輩の皆さん、マネージャーさんやスタッフの皆さん、そして何よりも五十嵐早香をいつも応援してくださり、素晴らしい場をご用意してくださったファンの方々、生誕祭委員の方々へ。いつも感謝しています。本当にありがとうございます。
早香、こんなことをしてもらえるのって決して当たり前ではないし、パパもSKE48のオーディションを受けたいけど、それは無理そうだからパパの分まで存分にアイドルを楽しんでください。
10期の皆さん、この子は少し変だし、未だに皆さんのことを「さん付け」で呼ぶなど社交性に問題があるかもしれません。ですが意外と気が小さいんです。お手数ですが、娘がこれからも皆さんのことを名字で呼んだらしつこく注意していただくと助かります。
P.S.
キャッチフレーズはもう少し短くした方がいいと思うな!
パパより
(2021年11月5日 SKE48劇場 研究生「We’re Growing Up」公演)