とうとう峯岸まで卒業か。
一番色々なことがあった末っ子を最後に嫁に出すようで、ほっとするのと同時に言いようのない寂しさを感じます。
ブルーシートで覆われ、まだ工事中だったこの秋葉原の劇場に第1期生のメンバーが集まった時、峯岸は13歳の子供でした。
「これから君たちはここで歌い踊り、日本一のアイドルになるんだ。東京ドームでライブをやり、NHKの紅白歌合戦に出場して、レコード大賞も取れるようなグループも作ろう」
こんな狭い劇場で大きな夢を語っている僕の話を峯岸はどんな思いで聞いていたのでしょう。
ダンスのレッスン経験があった峯岸はずば抜けてダンスが上手かったことを覚えています。
だから「PARTYが始まるよ」公演で峯岸のダンスをフィーチャーした曲があったのですが、あまりに上手すぎて他のメンバーとのバランスが悪くてすぐに外されてしまいましたね。
そのとき唯一自信があったダンスを認められなくて峯岸は途方に暮れたでしょう。
同時にスタートしたメンバーが次々に人気者になっていく姿を見て悔しかったでしょう。
振り返れば峯岸はいつも「私はどうすればいいんだろう」と自問自答を繰り返していたような気がします。
だからノースリーブスのカップリング曲の中で「私は私」というソロ曲を作りました。あの曲は、そんな峯岸の悩みに対するアドバイスでした。
そんな環境のせいもあったのでしょう。峯岸はいつも周りに気を使うメンバーになりました。メンバーにも、ファンにも、スタッフにも。誰のことも傷つけたくない。もちろん自分も傷つきたくない。心優しい峯岸みなみになりました。
ぴあアリーナの卒業コンサートに卒業メンバーがあれだけ駆けつけたり、ビデオメッセージをもらえたのは峯岸がこれまでどんなに悔しいことがあっても、悲しいことがあっても、決して腐らず、仲間を祝福し、応援してきた優しさの持ち主だからです。
他人に気ばかり使ってしまう峯岸が卒業して厳しい芸能界を歩き出すのは心配ですが、何かあればいつだってファンの皆さんを含めた仲間達が峯岸の元に駆けつけてくれると思います。もちろん僕も駆けつけますよ。
峯岸、卒業おめでとう。君の優しさがAKB48をこれまで1つにしてくれました。今までありがとう。
これからの峯岸みなみの活躍を期待しています。
2021年5月28日 秋元康
(2021年5月28日 AKB48劇場 峯岸みなみ卒業公演)